今回の長崎の旅でいちばんの目的は、長崎市の大野地区。2018年6月30日に世界遺産登録が決定した「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を構成する大野集落である。
その中にある教会の一つ、大野教会堂に最初に訪れた。


大野教会堂は、外海(そとめ)地区の主任司祭として赴任してきたド・ロ神父が、1893年に私財を投じて建てた小さな巡回教会である。





一般的に教会と聞いてイメージする建物とは、だいぶ趣が異なる教会である。石壁に瓦屋根。外壁は現地の玄武岩を積み上げ、漆喰モルタルで固めてつくられている。これは、ド・ロ神父が考えた工法で、地元では「ド・ロ壁」と呼ばれている。
他にも、上部が半円アーチ形のレンガ造となっている側面の窓や、洋式小屋組など、随所にド・ロ神父の建築技法が見られ、どこか南国の民家にも通じるような佇まいと洋風のディテールが混じり合い、地域に密着したなんとも言えない温かい空気感に包まれている。



そして、入口の前に作られた壁は、海からの強い風から守る役割を担っており、今までいくつもの強風に耐え抜いてきたもの。
そして、聖マリア像が手を広げてやさしく見守っている。僕はキリシタンではないが、宗教に関係なく訪れた人たちをやさしく迎入れてくれているような、あたたかな心地よさがある。
この教会を建てたド・ロ神父は、今も尊敬されている大きな存在。そのお人柄が教会にも表れているように感じられた。いつまでも居続けたくなるような心地よさがとても印象的だった。