
そんななかで最大の目玉の一つが「紅梅女人図」だ。スイスのローザンヌで描かれた肉筆画で、最晩年の傑作。繊細でやわらかな色彩と筆使いには一切の力みは感じられない。ここにたどり着くために今までのキャリアが必要だったのではないか?そう思わせる作品だ。

そして、もう一つの目玉が「夏帯」。音楽家で随筆家でもある福田蘭童夫妻のために描いたものである。とてもいい状態で残されているのは、おそらく一度も身につけられることなく、大事に保管されていたのだろう。夢二と蘭童夫妻の思いが浮かんでくるような帯だ。
ほかにも、セノオ楽譜や婦人グラフをはじめとするグラフィックデザイナーとしての夢二の作品が数多く展示されている。夢二ファンはもちろん、グラフィックデザイナーやデザイナーを志している人たちにも観ていただきたい展示だ。