
パキスタンの怪人、50歳を前にして1997年に急逝したヌスラット・ファテ・アリ・ハーンのラストアルバム。イスラム教神秘主義スーフィズムにおける儀礼音楽カッワーリーの歌い手だが、僕が最も衝撃を受けた歌い手の一人だ。
このアルバムはライブアルバムなのだが、スタジオ盤とは違う生々しさと、ロックを思わせる躍動に惹きつけられる。カッワーリーは宗教音楽の一つに入ると思うが、これはもう、完全にロックでありソウルミュージックだ。
もともと宗教は大事なメディアでもあり、その中で音楽が果たす役割はとてつもなく大きかった。ゴスペルはそのいい例だが、世界のあらゆる宗教でそれは見て取れる。そして、ヌスラット・ファテ・アリ・ハーンはカッワーリーの素晴らしさを世界に知らしめた偉大なミュージシャンであることを、このアルバムで改めて強く感じるのだ。