

佐川美術館内にある樂吉左衞門館は、この出張で一番楽しみにしていたものだ。この時の展示は萩焼・十五代坂倉新兵衛氏と樂焼・十五代樂吉左衞門氏とのクロストーク・コラボレーション展。萩焼の板倉氏が樂焼に、樂焼の樂氏が萩焼に挑戦したものである。
400年以上の歴史を持つ樂焼と萩焼だが、その制作方法はかなり違う。樂焼は手捏ね制作、そして焼成は鞴(フイゴ)を用いた小さな内窯で一碗ずつ焼き上げる。一方、萩焼は轆轤制作で登窯焼成だ。
樂氏が焼き上げた萩焼は、僕が知る萩焼とは違う趣があった。良い意味で尖っているような印象があるのだ。そして、適度な緊張感を伴っている。しかし、どこかあたたかい。樂氏の樂焼の要素が入っているような気がした。
一方、板倉氏の樂焼はまるくやさしい。しかし、その中に独特のすごみが潜んでいる。内面にある迫力がやわらかに、ひかえめに、しかし確実ににじみ出ている。これもまた、印象的だ。
この展示は、展示作品も素晴らしいが、展示方法もまた素晴らしかった。空間を贅沢に使い、それぞれの作品を際立たせるような演出が、さりげなく自然にされている。是非、機会があれば何度も訪れたい。